誘惑に負けない意思の鍛え方

こんにちは。ねこままカフェ・スタッフのよっしーです。
今日はADHDな人が苦手な時間管理や気移りについての対応法について書いてみようと思います。

ちょっとイメージしてみてください。
あなたは朝起きて、もう少ししたら仕事に出かけなければなりませんが、まだあと15分くらい時間があります。
ふとスマホを手にして見始めたサイトがなぜか面白くて読み進めます。

すると過集中が発動して、気がついたら30分以上経っています。
やばい遅刻だ、と気がついても後の祭り。
急がなきゃと思ったら、まだ歯磨きしてなかった。
あ~眉くらい書いて出なきゃ、と。

職場に着くと、いつものことで。「また遅刻っすか~」という同僚・上司の目
落ち込みますよね?それとももう慣れっこですか?

ADHDだからって、計画を立てて実行し、集中力を生かして仕事をし、ネットや街角のショーウィンドウの誘惑に負けずに生活している人もいます。そういう人たちは、少なからず自分で努力や工夫をして、もちろんまわりの理解と助けを得ながら意志の力を鍛えて克服した人なのではないでしょうか。
意志の力とは、未来を考えたり、計画を立てたり、明確な目標を設定する能力で、人間にしか出来ない脳機能の一つです。まずは、脳の機能についてみていきましょう。

3つの脳

ヒトの脳には3つの、働きのちがう領域があるといわれています。
ポール・マクリーン博士の言う「三位一体脳」という考え方です。
「The Triune Brain in Evolution」邦訳:三つの脳の進化(工作舎)
右脳と左脳という言葉は皆さん聞いたことがあるでしょう。
でも実は脳は包み紙にくるまれたお饅頭のような3層構造になっています。
真ん中のあんこの部分、皮の部分、そして包み紙の部分です。

真ん中のあんこの部分は「爬虫類の脳:脳幹」といわれる部分です。
ここは、ヒトの本能をつかさどる部分です。
呼吸や心臓の拍動、呼吸や体温調節、性行動
暑ければ汗をかき、寒ければ震えて体を温めようとする(産熱)
お腹がすけば食べ物を食べたくなるし、のどが渇くと飲み物がほしくなる
そうした生命維持の根幹を支えている部分。
もうひとつ大切な機能は、危険を察知し逃げるという機能。
トカゲを捕まえようとすると逃げ出しますよね。
あれは身を守るトカゲの本能です。
つまり「生命維持」の脳です。

爬虫類脳は、祖先から受け継いだ記憶(生命維持本能)のままに生きていますので、新しい場面に遭遇したときにはどうして良いかわからず硬直します。過去の経験に縛られて新しいことに取り組むのは苦手なのです。なにか思い当たることはありませんか?
この爬虫類脳の働きにより、目標を立てても「面倒だし、まいっか」と新しい行動に取り組むことを困難にします。

その外側にあるのが「哺乳類脳:大脳辺縁系」です。
爬虫類脳を包み込む皮の部分。
ここは、偏桃体、海馬、帯状回などの大脳辺縁系と呼ばれる部分で、「喜び、怒り、恐怖、好き嫌い」という情動的な部分を受け持っています。
哺乳類は感情豊かな生き物です。ネコを見ていると、甘えたり、そっぽを向いたり、不安そうにしたり、あるいはつめを立てて牙をむくことも。そういう情動をもつ、「感じる脳」なのです。

哺乳類脳は、群れで暮らし、仲間と協力して子育てをしたり、弱い子供を庇護し支える母性のような本能をつかさどります。
コミュニケーションを求めたり、リーダーシップを取ることへの欲求は、ここから生まれます。群れの中でリーダーになれば優秀な遺伝子を後世に残すチャンスが広がるからでしょう。

3つめの包み紙に相当する部分。これが「人間脳:大脳新皮質」です。論理的思考や数学的思考、創造性などの知的な働きを支えています。つまり「考える脳」です。
ヒトがほかの動物と一線を画するのは、「未来を思考し予測できる能力」です。こうした能力のおかげでヒトは理性を持ち、知的欲求という目的意識を持ち、計画を立てて行動することが出来ます。そうしてヒトは精神的にも大きな成長を勝ち得ます。
人間脳は、高次で複雑な情報処理を受け持っています。外界からインプットされる情報を整理し、過去の記憶や経験と照らし合わせて判断し、必要があれば行動するためのプランを思考します。この作業を行うのがいわゆる「ワーキングメモリー」です。

ADHDでは、このワーキングメモリーがうまく働かないケースが見られます。情報を整理し判断してどう反応すべきか、という思考過程がうまく連携できず、つい心に浮かんだことを口にしたり、過集中が起こったりするのです。つまり、真ん中の哺乳類脳が優位に働いて、人間脳が制御できない状態といっても良いでしょう。

3つの脳の連携

実際には、ヒトと言えどもこの人間脳だけで生きていくことはできません。爬虫類脳や哺乳類脳と人間脳が連携しながらヒトの思考や行動はコントロールされています。マクリーン博士によれば、この3つの脳が同居していることが「人間の苦悩」だということ。地球上に生命が誕生したのはおよそ40億年前。人類の祖先といわれるホモサピエンスが誕生したのはたったの40万年前。文明を持つようになったのはおそらく1万年前といわれています。つまり人間脳=大脳新皮質は、とても新しい脳なのです。

ディスクレシア(読字障害)という症状があります。文字が覚えられなかったり、文字を組み合わせて単語(チャンク化)として理解することが苦手というものです。考えてみれば文字が発明されたのは紀元前4千年ごろで、漢字の発明は紀元前1500年ごろといわれています。つまりヒトが文字という文明を得てからまだたいして時間がたっていません。ですから、この文字とか言葉を専門に扱う脳の領域は生命科学的にはまだ発達途中なのです。このため、文字を意味のある記号として認識できなかったり、形がゆがんで見えたりするということが起こりえるのです。

ADHDもこうした人間脳の部分、特に前頭前野の神経伝達異常によるものと考えられていますが、とりもなおさずヒトの脳がまだまだ発展途上のものであることからくるものと考えられます。しかし、これは考えようによっては次世代のヒトの進化の予兆とも考えられます。ADHDは遺伝的な形質があるといわれていますが、ADHDが優勢として遺伝していくのだとしたら、それはまさに進化の過程であってひょっとするとニュータイプへの進化の入り口に立っているのかもしれません。

誘惑に負けない脳の鍛え方

話を元に戻しましょう。
ADHDなひとが時間管理が苦手なのは、上にも述べたとおり主に人間脳(大脳新皮質)の働きが誤作動しているのだと考えられます。なので本来、爬虫類脳や哺乳類脳を包み込んでコントロールしている部分に、ぽかっと穴が開いて本能の部分がむき出しになってしまう様なものです。
爬虫類脳は、新しいことにチャレンジすることが嫌いな保守的な脳ですし、哺乳類脳は、楽しいことが大好きなお茶目な本能の部分ですからこうした部分が優位にはたらくと、「やんなくっていいんじゃね?」とか「こっちのほうが楽しそうだよ」と無意識とか潜在意識として理性的な思考を邪魔してきます。ですから、これらの衝動的な反応を抑えて理性のコントロールを聞かせるためには、脳のトレーニングが必要になってきます。

脳は使えば使うほど活性化し、使わなければ衰えていきます。これは、脳内の神経伝達を担う仕組みからくるものです。脳細胞同士が連絡を取り合うことを繰り返し行うと、樹状突起と呼ばれる手の様なものが伸びてネットワークを強化します。ADHDの場合は、このニューロン同士が連絡を取り合う手段として使う神経伝達物質(ドーパミン)の働きが阻害されている、ということもわかっていますから、その働きを強めるコンサータやストラテラといった薬を使って補います。しかし、脳を強くするのは薬ではなくあくまで脳トレーニングです。薬はその補助に過ぎません。
まずはストレッチから初めて、だんだんと脳を活性化するトレーニング、特に苦手なスケジュール管理や過集中に対するトレーニングで脳を鍛えることが大切です。

まず大切なのは、「意思を貫く」ことを意識すること。自分は意志が弱いから、とは考えないで。意志の力は筋トレのように自分で強くしていくということを意識します。

2つめは、ちょっとがんばれば達成できそうなレベルの目標を立てること。
「今日は出勤前にスマホを見るのをやめよう」とか
「忘れ物をしないように持ち物リストを、いついつまでに、玄関に張ろう」とか。
いきなり、「今日は仕事で失敗しない」なんていう無茶な目標は返って逆効果です。
やだな、めんどうだなと思わないくらい、はじめは思いっきりハードルを下げておいても大丈夫です。
そうして少しずつ、目標のレベルを上げて行きましょう。

3つめは、一度にいろんなことをやらないで、1つに集中する。
洗濯ものをたたまなきゃ、食事の後片付けしなきゃ、子供の連絡帳書いたっけ?
やらなければいけないことが山積になることもあります。けれど、まずは優先してやらなければいけないことを1つ決めてあとはとりあえず放っておく。そして、後回しにした物に優先順位をつけてToDoリストやポストイットに書いておきます。
そして、一番大事なのは、やらないといけないことを1つ決めたら、1時間と決めてタイマーをセットすること。カウントダウンタイマーなどの視覚的に残り時間が見えるものを使うと良いでしょう。そして、1時間たったら途中でもきっぱりやめる。もうちょっとやってから。というのは逆に過集中の脳を強めてしまいます。

タイムタイマー

4つめは出来たことを見える化して、自分をほめてあげる。
脳には報酬系といって、ヒトの行動を誘発する仕組みが存在します。特に喜びを誘発する肯定的感情は、またチャレンジしようというモチベーションにつながります。しかし、場合によってはこの仕組みは依存症として働いてしまうこともあります。

特にドーパミン分泌が関係する「報酬系の中枢」は“A10”と呼ばれる神経で、中脳の腹側被蓋野から大脳の前頭前野(理性中枢)・扁桃体(感情中枢)・帯状回・視床下部・側坐核(快感中枢)・海馬などにつながっています。ADHDでは、帯状回や側坐核のドーパミンの働きが弱く、報酬系がうまく機能しないと考えられています。
つまり、ADHDにとってはこの報酬系を鍛えることも大事な脳トレーニングになります。
いつも仕事で失敗して怒られて気分が沈んだり、投げやりな気持ちになったり。こういう感情は報酬系に負の連鎖を生みます。
まずは小さなことから「できた!」を積み重ねて、報酬系回路を鍛えるようにしましょう。まわりの理解も大切で、叱るよりまずほめる。
小さなことでも「できた!」というときには、自分へのご褒美にスィーツを買ったり、1時間だけ好きなゲームに没頭するなど、うれしい、楽しい、大好きを感じてください。きっと脳はどんどん活性化していくでしょう。

ちいさなことからで結構です。小さな目標と小さな成功体験を繰り返し、出来た喜びを積み重ねていくことが、苦手を克服するための第一歩です。がんばらなくて良い。でもちょっと背伸びしてみませんか?

違う風景が見えるかもしれませんよ。

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